石原さとみさんが母親になってから初めて主演を務める、映画「ミッシング」が、5月17日に公開されました。
筆者は、3月に予告編が解禁されてから、ずっとこの映画が気になっていました。
これまでの石原さとみさんといえば、常に、女性がなりたい顔の上位にいて、その美しさ、可愛らしさが彼女の最大の武器だったと思います。
しかし、今回の映画では、これまで彼女が強みとしてきた見た目の華やかさを全て封印し、怪演とも言えるほどの、圧倒的な演技力を見せつけています。
今回は、映画ミッシングについて、ネタバレと私自身の考察を交えながら、感想を綴っていきたいと思います。
あらすじのみならず結末まで全て公開しますので、まだ見ていない方で、ネタバレを好まない方は、ぜひ映画を見た後にこのブログに戻ってきていただければと思います。
では、見ていきましょう!
映画「ミッシング」のあらすじは?
まず、映画ミッシングのあらすじについてみていきましょう。
とある街で起きた幼女の失踪事件。
あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。
そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。
https://wwws.warnerbros.co.jp/missing/
予告編は、「なんかまためちゃくちゃひどいこと書かれてんだけど」という沙織里の、ぶっきらぼうな一言から始まります。
顔を歪め不快感をあらわにしている、石原さとみさんのその表情から、この映画には、これまで知っている華やかな石原さとみは出ていないんだと悟ります。
「そんなに嫌なら見なきゃいいだろ」という豊(青木崇高)に対し、「わかってるよ!わかってるけど、見ずにいられないの!」と怒鳴る沙織里。夫婦のすれ違う気持ちが映し出されます。
美羽が失踪してから、ずっと取材を続けてくれている地元テレビ局の記者・砂田は、中村倫也さんが演じます。
砂田には、局の上層部から、沙織里や、美羽失踪時の最後の目撃者である沙織里の弟へ、世間の関心を煽るような取材をするように、指示が出てしまいます。
推しのアイドル「Blank」のライブに行っていた沙織里。3人組のそのアイドルがMrs. Green Appleに見えた。
沙織里が、推しのライブに行っていたことが明らかになったことで、世間からのバッシングはますますひどくなりましたが、私は映画を見て、沙織里の推しが誰だったのかが、とても気になりました。
そのアイドルは、「Blank」という3人組で、沙織里の部屋にポスターが貼られていたり、テレビの映像などで、映画の中に何度か登場します。私の目から見ると、Mrs. Green Apple(ミセスグリーンアップル)に、とてもそっくりに見えました!
ミセスグリーンアップルも、最近とっても見た目が華やかになって、メイクもバッチリしていますし、バンドですがアイドルっぽくも見えますよね!
とても気になったので調べてみたのですが、このアイドルグループに関する情報は見つけることができませんでした。わかったら追記したいと思います。
沙織里の弟、圭吾(森優作)や母親(美保純)との関係は?
沙織里の弟である圭吾を演じているのは、森優作さんです。
私は、森優作さんという俳優を、この映画で初めて知りましたが、もう、現実にいる人にしか、見えなかったです。
中学生でいじめに遭い、精神的におかしくなってしまっている弟。中学生の頃は、道で急に大声を出したり、不安定な言動が多かったと砂田たちの取材で明らかになります。
沙織里と圭吾の母親は、美保純さんが演じており、一度だけ映画の中で登場するのですが、なんだか親子関係がうまくいっていない感じが見て取れます。
美保純さんが登場するシーンでは、沙織里の実家で食卓で美保純さんが、「これ、少しだけど」と沙織里にお金を渡します。美羽の捜索にはチラシやポスターの印刷など、お金がかかりますので、それに使うためのお金です。
沙織里はぶっきらぼうに「ありがと」と呟いて受け取りますが、美羽の捜索方法などについて、色々言ってくる母親に対し、「わかってるから!」と声を荒げます。
美保純さんは、そのワンシーンのみで、それも私にとってはとても違和感がありました。
圭吾は結婚しておらず、沙織里にとって一人娘である美羽は、美保さんにとっても、たった一人の孫のはずなのです。
なのに、チラシを配るシーンにも出てこなければ、弟にテレビに出演するよう説得する場面でも出てこない。放置な感じがするのです。
二人とも成人している大人なのだから、といえばそれまでなのですが、一人孫が行方不明になって、直前まで一緒にいたのが自分の息子だったとしたら、もっと美保純さんが関わってきてもいいのでは?と思うのです。
だから、ここの親子関係も、かなり微妙なのでは?疎遠すぎるくらい疎遠なのでは?と感じました。
沙織里の弟(圭吾)が犯人なのか?
物語は、沙織里の弟の圭吾が犯人であるかのように、展開していきます。
最後に美羽と一緒にいたのが圭吾で、取材に答えるときも、不自然な言動が多く、見るからに怪しいからです。
しかし、実際には圭吾は犯人ではありませんでした。職場の先輩から誘われて、裏カジノに行っていたことを隠すために、「脚立の乗った怪しい白い車を見た」だとか、「(自分は)ずっと家にいた」だとか、嘘をついていたのです。
物語の終盤で、なぜ圭吾が「脚立の乗った白い車」という言葉を言ったのかがわかります。
圭吾は、実は子どもの頃に脚立の乗った白い車に乗せられて、変な男に連れ去られた経験があったのです。
姉である、沙織里すら知らなかった圭吾の過去。
圭吾にとっては、今回の失踪事件は過去の自分の事件を思い起こすきっかけになっており、それにより、あんなにも圭吾が情緒不安定に動揺していたのだと言うことがわかります。
闇カジノに行っていたことだけが、圭吾を不安定にしていたのではなかったのです。
美羽の失踪は、解決しない。では、「その先にある光へ」とは何を表すのか?
結局、美羽ちゃんは見つからず、遺体も出ず、犯人もわからないまま、物語は幕を閉じてしまいます。
では、予告編の最後で言われていた「その先にある光へ」の、「光」とは、一体なんだったのでしょうか?
筆者としては、以下の4点だと思います。
・美羽ちゃんと公園で遊んでいたのに、300m離れた自宅まで送らなかった上に、違法カジノに行っていたことを隠すために嘘をついた沙織里の弟。その弟との仲が、改善される。(事件から2年半以上経って、初めて弟が、沙織里に対して謝罪した)
・沙織里夫婦に、酷い誹謗中傷を繰り返していた男が刑事告訴された。
・美羽と同様に行方不明になった女の子が見つかって、その女の子の母親が、美羽を探すお手伝いを申し出てくれた。
・沙織里が、行方不明になる前の美羽と同じように、小学校に通う子ども達に対して、通学路で横断歩道を渡る補助をするボランティアを始めた。
石原さとみが失禁するシーンまで演じ、これまでの女優人生を覆した。女優・石原さとみの代表作となる予感。
私は、映画を見ている間中、「これは、ドキュメンタリーだ」と感じていました。
そのくらい、石原さとみさんの演技は凄かったですし、「憑依している」という表現すら陳腐に感じるくらい、実際にいる、子を失った母親に見えました。
また、石原さんの姿を見て、本当にどん底に絶望した時には、人間はここまで狂ってしまうのだと感じさせられました。
そして、ニュースでたまに見かける「〇〇ちゃんの失踪から○年」というように報じられている、その家族は、毎日毎日、こんな人生を送っているのかもしれないと、衝撃を受けました。
ネットで目に見える誹謗中傷だけではなく、職場での寄付カンパに対する心無い人からの嫌味や、チラシを配っても、時間が経つと受け取ってすらもらえなくなること。
貼ったポスターの、子どもの写真の目の部分に、いたずらで画鋲を貼られたりすること。
挙句の果てには、チラシに書いた携帯番号に、警察を名乗る人物から、「お子さんが保護されましたよ」と、イタズラ電話。
イタズラ電話のシーンは、特に印象強く、心に刻まれています。
本気で保護されていると信じて警察署に向かい、いたずらだったと気づいた時の、石原さんの、顔を真っ赤にして、目を見開いて、もはやどこを見ているかわからない表情、顎が外れるほど開いた口、そして叫び、手足を痙攣しているほどに震わせて、ついには失禁してしまう、そのシーン。
そんな風な苦しみが、ニュースで報道されていないだけで、実際には子どもが失踪した家族には、あるのかもしれない。
幼い子がいなくなった報道を見て、「かわいそうだな」と心から思っても、その家族がここまで壮絶な人生を歩んでいるとは、私は想像できていませんでした。
子どもを持つ親は、自分に置き換えて、泣き続けてしまう可能性が高いので、気持ちが落ちても沈んでも、大丈夫な精神状態と、心の余裕がある時に見ることをおすすめします。
余談ですが、ミッシングのパンフレットには、映画の台本が全て載っており、一つ一つのセリフを噛み締めながら、映画を振り返ることができます!1200円と、普通のパンフレットよりお高めなのかな?と思いますが、A5サイズで、96ページもあり、写真集かのような素材でできていて、かなり満足度が高いので、おすすめです!
この映画は、美羽の事件が解決しないという点では救いはないですが、間違いなく、私の人生に残る作品です。
このような映画を作ってくださった吉田監督と石原さとみさん、関わった全ての皆さんに、心から感謝します。
長文を最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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